憲法しんぶん速報版

27号

集団的自衛権容認の議論広がる

第9条の全面的な否定ねらう

 21世紀最初の国政選挙となる参院選の火ぶたが切っておとされました。この参院選は、まさに21世紀の日本に憲法を輝かすことができるかどうかの大きなカギをにぎっています。そこで、各党が発表している公約を中心に、各党の憲法にたいする姿勢をみてみましょう。

 【自民党】3月の党大会の決定をそのまま参院選にあたっての「わが党の重点政策」にとりいれています。「わが党は『国民主権』『平和主義・民主主義』『基本的人権の尊重』の原則を踏まえ、わが国が国際社会の一員として直面する国際平和への協力、地球環境、遺伝子解明に伴う生命倫理、インターネット時代のプライバシーの保護など、未経験の諸課題を考慮しながら、日本国の歴史、伝統、文化を踏まえ、調和のとれた国民の権利と義務を規定する等、21世紀日本の目指すべき指針と国の形をオープンに議論し、『あるべき国家の姿』を国民の前に明らかにします」と、改憲案を発表することを表明しています。

【保守党】「参院選政策」として発表された文書は、A4用紙も埋まらないもの。しかも、与党としての「実績」ならべたてた後に「小泉内閣を全力を挙げて支え、経済構造改革を始め、聖域なき構造改革を断行するとともに、日本の良き文化・伝統・歴史を大切にし、共同体としての責任と社会的正義を大事にする活力の中にも安定感のある『堂々たる21世紀の新しい日本』をつくります」と述べているのみ。もちろん、国会の憲法調査会では「戦後平和が保たれたのは安保条約のおかげで、憲法のためではない。21世紀がこのままいけるか」(安倍基雄議員)と述べるなど、憲法改悪をめざしている。 

【公明党】選挙公約では直接改憲問題に言及していませんが、昨年11月の党大会で決定した「重点政策」では、「衆参両院での憲法調査会での5年をめどにした論議の結果を踏まえ、次の5年で第一段階としての結論を出すべき」と、10年以内の改憲を打ち出しています。また、「国連だとかあるいは国連軍に近い形としての多国籍軍というもの、いわゆる集団的安全保障というものに対して日本がかかわることについては憲法にもう少しはっきり明確に書くべき」(赤松正雄議員、昨年12月7日、衆院憲法調査会)、「(集団的自衛権が行使できないという解釈は)冷戦時代に日本がとった解釈」であり「政策的判断で状況が変われば変えることができるはず」(益田洋介議員、6月7日参院外交防衛委)、9条問題で踏み込んだ明文・解釈改憲の発言が目立っています。

【民主党】「選挙政策」で改憲問題に直接言及していませんが、PKF凍結解除や緊急事態法の制定、首相公選制の検討などをかかげています。また、鳩山党首らが集団的自衛権行使のための憲法改悪をとなえるなど、党の大勢は改憲派が多数となっています。【自由党】選挙公約として、「国家の基本となる新しい憲法を創る」を掲げています。すでに昨年12月、「新しい憲法を創る基本方針」を発表し、「自衛隊の権限と機能、内閣総理大臣の指揮権を憲法に明記」するなどとしています。

【社民党】選挙政策では、「平和憲法の理念を世界に拡げ、軍事力によらない平和を実現します」とし、「自衛隊の縮小」「日米安保体制の転換」などを強調しています。しかし、村山委員長時代からの自衛隊合憲・安保容認の方針は転換されておらず、あくまで、現状のもとでの改革を主張するにとどまっています。

衛権にたいするこの重大な姿勢の転換について、自民党の山崎拓幹事長が、「とりあえず国会決議によって、一定の範囲で集団的自衛権の行使を認めること」を提案、小泉首相は「それも一つの考え」と応じました(5月9日)。また、民主党の岡田克也政審会長が、「もしやる必要があるのであれば憲法改正でやるべきだという総理の従来の見解、そちらの方が正しい」という質問に、首相は「基本認識は、私と共有する面が多い」と答え(5月15日)、両面から臨む構えです。

しかし、その集団的自衛権の実態はどういうものか。日本共産党の筆坂秀世議員が質問しました。田中外相は、「旧ソ連によるチェコやアフガニスタンでの軍事行動、アメリカによるベトナム戦争」をあげ、それ以外は「承知しておりません」と答弁(5月22日)。その内容は、侵略戦争そのものです。

自民・国防部会が作業開始
  公明党も解釈変更を要求

自民党の国防部会は、3月に発表した提言「わが国の安全保障政策の確立と日米同盟」なかで、国家安全保障基本法(仮称)の制定によって集団的自衛権の行使を認めることが望ましいとの方向を示しています。この提言にもとづいて具体的作業をすすめる小委員会が5月30日発足しました。

 一方、公明党はこれまで国連の軍事行動への参加までは認めるが集団的自衛権の行使は許されないとする態度をとってきました。しかし、6月7日の参院外交防衛委員会では、同党の益田洋介議員が、集団的自衛権の行使は許されないとする今の憲法解釈は「冷戦時代に日本がとった解釈」で、今は日本への侵略の脅威が減少し、これからは「アジアの安全保障が問題になっている」とし、「政策的判断で状況が変われば、(解釈)を変えることができるはず」と主張しました。

憲法調査会の動向

 【衆院憲法調査会】
 6月4日 地方公聴会(神戸市)…10人の公述人が意見を述べました。特徴は、「地方行政においては憲法の具体的な実践が必要」(柴生・川西市長)、「憲法の生存権を踏まえた被災者支援を」(笹山・神戸市長)、「軍備に巨額を投じるのをやめ、大規模災害、食糧・エネルギー問題などで世界のリードを」(浦部・神戸大教授)、「日米安保の友好条約への転換し平和憲法を守り生かす政策を」(中北・弁護士)、「政府は憲法を軽視せず、現実を憲法に近づけるべき」(中田・大阪工業大助教授)など、憲法を積極的に生かすべきとの意見が多数を占め、明確に改憲を主張したのは3名にとどまったことです。
 6月14日 9時〜11時30分
*神戸公聴会の派遣報告
*自由討議
 【参院憲法調査会】
 6月6日…国の統治機構に関連して政府がこれまで示した見解について、坂田雅裕・内閣法制局第一部長から説明を受け、質疑。 (以後の日程なし)

 地方公聴会に対応し、
  神戸と東京で集会、宣伝

 地方公聴会が開かれた6月4日夜、神戸市では兵庫憲法会議と自由法曹団兵庫支部の主催で報告集会「憲法調査会は神戸で何を調査したか」が開かれ、約70人が参加しました。集会には、公聴会に参加した春名眞章議員や中田作成大阪工業大助教授、傍聴者らも参加。それぞれの感想を述べるとともに、憲法を守る運動を広げようと語り合いました。
 東京では、4日昼、中央・東京の憲法会議が神田神保町の交差点で街頭宣伝。「それが『改革』?小泉首相、世界に輝く憲法9条への挑戦」のチラシを配付しながら、全教、全労連、国公労連、新婦人、東京の代表が訴えをおこないました。

『憲法運動』5,6月号活用を

 『月刊憲法運動』5月号(資料特集「憲法調査会の1年と政党の改憲論議」)と6月号(東京・日比谷公会堂における5・3集会の内容を特集)の残部があります。各種集会等で積極的にご活用を。