日本商工会議所 憲法問題に関する懇談会報告書
憲法改正についての意見
報告書全文
 日商ニュース2005.6.16より> 日本商工会議所が昨年7月に設置した「憲法問題に関する懇談会」(座長・高梨昌芳横浜商工会議所会頭)では、このほど最終報告書をとりまとめ「憲法改正についての意見」として公表した。昨年12月に発表した「中間とりまとめ」で保留にしていた「集団的自衛権」については、「本来、自衛権の中に含まれるのが国際法上の常識で、憲法に自衛権の保持を明記する以上、日本も当然保有していると考えるべきだ」との見解を示した。
 同懇談会では、これまで各地商工会議所の意見を集約しながら、地域総合経済団体の立場で提言することが望ましい項目を中心に、改憲の必要性やその方向性について議論を重ねてきた。その中で特に議論が集中した「期待する憲法改正のポイント」として、「前文」「安全保障」「国民の権利・義務と公共の利益の関係」「地方分権」「教育問題」「改正発議要件」の6項目を挙げた。
 また、憲法の基本的性格については、そもそも憲法とは「主権者たる国民が代理人に託した国家権力の行使について歯止めをかけるもの」と位置付け、国家の役割を「国民に幸福な生活を保障すること」であるとし、「憲法は国家権力担当者が一般国民を統制する手段ではない」と定義した。そのうえで「主権者たる立場(=国民)には義務が伴い、権利の濫用(らんよう)が許されないことは当然である」と行きすぎた個人主義のまん延をいさめ、「憲法改正というと、国家が国民に責務を押し付ける内容の議論が出てくることは望ましくない。代表民主制のもとで日本国民がつくり、時代の変化に則し、世界に誇る新しい憲法を表明したい」との基本認識を示した。
 憲法改正については、「すべての条文に手をつける必要はなく、賛否両論あるテーマは継続審議とし、ともかく合意できる部分から時代に合った改正を実現することに意義がある」としたうえで、「日本のように長年改正しなかった国はない。憲法に国民が責任と関心を持つこと自体が重要」であるとした。
 このほか報告書では、同懇談会で議論が行われた項目を「その他」として、@象徴天皇制は今後とも維持すべき、A統治機構=二院制を進めるため衆参両議院の位置付けを明確化し参議院議員の選出方法などを改正、首相公選制は望ましくない、B司法改革=憲法裁判所の設置は今後時間をかけて検討していくべき、現在の最高裁判所裁判官の国民審査の方法は改めるべき、C非常事態への対処に関する法規制の根拠規定を設けるべき、と4項目を付記した。
 日商では、今回の報告書を各政党や国会などに提出し、各政党の新憲法草案や国会の憲法改正発議に反映させていくことを目指す。