衆参憲法調査会の報告書提出にあたって

 衆院憲法調査会は四月十五日、参院憲法調査会は四月二十日、五年にわたる「調査」の結果と称する報告書をそれぞれの院の議長に提出しました。これらは、「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」とした憲法調査会設置の目的を著しく逸脱したものであると同時に、五年間の「調査」の内容すら反映していないものであり、私たちは断じて容認することができません。

 第一に、そもそも国会に憲法調査会を設置することを求めた人びとが強く主張したことは、「憲法と現実の乖離」の問題であり、したがって、憲法調査会の中心的任務は、その「乖離」の実態や原因を「広範かつ総合的に調査」することにあったはずです。しかるにこの五年間、両院の調査会では改憲を求める議論がしつようにおこなわれてきました。その結果まとめられた今回の最終報告書も、まさに改憲に向けての論点整理となり、とりわけ衆院調査会の報告書は第九条をはじめ広範な点にわたって多数意見と少数意見をことさら明示することによって改憲案作成へ道筋をつけようとしています。

 第二に、最大の焦点となった第九条について、この間の中央・地方の公聴会では、その先駆的意義が多くの人びとによって強調され、第九条を生かすことこそ二一世紀の日本がめざすべき道であるとの意見が表明されました。この間発表された各種の世論調査でも、それが国民多数の意思であることが示されています。にもかかわらず、報告書は、これらをほとんど無視して九条改悪をとりわけ強調するなど、まったく国民不在のものとなっています。

 第三は、調査会は、「概ね五年を目途」に調査をおこない、議長に報告書を提出することを合意して出発したものです。したがって調査会は報告書提出をもって速やかに解散すべきであるにもかかわらず、報告書は、今後調査会を継続させ、「憲法改正国民投票法」についての論議や具体的な法案作成を行わせることまで盛り込み、改憲に向けたレールを敷く役割を担わせようとしています。これは各党合意を踏みにじる越権行為であり、国民をあざむくものといわねばなりません。

 私たちは、今回の報告書の反国民的内容を徹底的に批判する運動を起こします。同時に、日本国憲法の先駆的・先進的内容を学ぶ運動を草の根に広げ、自民、民主、公明などによる憲法改悪の企てを阻止するために全力をあげるものです。

   二〇〇五年四月二〇              憲法改悪阻止各界連絡会議