【自由民主党憲法調査会】 (2006年4月12日)
【自由民主党・公明党合意】(2006年4月18日)
  
合意に当たって削除された部分(第七の六項)を赤字で表示します
日本国憲法の改正手続に関する法律案(仮称)・骨子素案

第一 趣旨

 この法律は、日本国憲法第96条に定める憲法改正について、国民の承認の投票(以下「国民投票」という)に閥する手続を定めるとともに、あわせて憲法改正の発議の手続を整備するものとすること。

第二 総則

 一 国民投票の期日等

 1 国民投票は、国会が憲法改正を発議した日から起算して60日以後180日以内において、国会の議決した期日に行うものとすること。
 2 総務大臣は、国民投票の期日の通知があったときは、速やかに、中央選挙管理会に通知しなければならないものとすること。中央選挙管理会は、総務大臣から通知があったときは、速やかに、国民投票の期日を官報で告示しなければならないものとすること。

 二 国民投票の投票権

 衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する者は、国民投票の投票権を有するものとすること。

 三 国民投票の執行に関する事務の管理

 国民投票の執行に関する事務は、中央選挙管理会が管理するものとすること。

第三 憲法改正案広報協議会及び国民投票に関する周知

 一 憲法改正案広報協議会

 1 憲法改正の発議があったときは、その国民に対する周知及び広報に関する事務を行うため、国会に、各議院においてその議員の中から選任された同数の委員で組織する憲法改正案広報協議会を設けるものとすること。(この設置根拠規定は、国会法に置くものとする。第一三の四参照。)
  2 憲法改正案広報協議会の委員は、各会派の所属議員数を踏まえて、各会派に割り当てて選任するものとすること。
  3 憲法改正案広報協議会は、憲法改正案、その要旨及び解説、憲法改正案に対する賛成・反対の意見その他の事項を掲載した国民投票公報の作成その他憲法改正案の周知に関する事務を行うものとすること。

 二 国民投票に関する周知

 1 総務大臣、中央選挙管理会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、国民投票に際し、国民投票の方法その他国民投票の執行に関し必要と認める事項を投票人に周知させなければならないものとすること。
  2 中央選挙管理会は、国民投票の結果を投票人に対して速やかに知らせるように努めなければならないものとすること。

第四 投票人名簿及び在外投票人名簿

 l 市町村の選挙管理委員会は、国民投票が行われる場合においては、投票人名簿及び在外投票人名簿を調製しなければならないものとすること。
  2 市町村の選挙管理委員会は、中央選挙管理会が定めるところにより、当該市町村の区域内に住所を有する投票人で当該市町村の住民基本台帳に記録されているものを投票人名簿に登録しなければならないものとすること。この場合において、国政選挙の場合と同様に、いわゆる「3箇月居住要件」を維持するものとすること。

第五 投票及び開票

 一 一人一票

 国民投票は、憲法改正案ごとに一人ー票に限るものとすること。

 二 投票管理者及び投票立会人

 投票管理者及び投票立会人に関し、必要な規定を置くものとすること。

  三 投票用紙

  投票用紙は、国会の発議に係る憲法改正の議案ごとに調製するものとすること。

 四 投票の方式

 投票人は、投票所において、憲法改正案に対して賛成するときは○、反対するときは×の記号を、自ら記載して、これを投票箱に入れなければならないものとすること。

 五 開票管理者及び開票立会人

 開票管理沓及び開票立会人に関し、必要な規定を置くものとすること。

 六 投票及び開票に関するその他の事項

 国民投票の投票及び開票に関しては、公職選挙法中衆議院比例代表選出議員の選挙の投票及び開票に関する規定の例によるものとすること。

第六 国民投票分会及び国民投票会

 一 国民投票分会及び国民投票会

 国民投票分会及び国民投票会に関し、必要な規定を置くものとすること。

 二 国民投票の結果の報告及び告示等

 1 中央選挙管理会は、国民投票の結果の報告を受けたときは、直ちに、有効投票の総数、憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数並びに憲法改正案に対する賛成の投票の数が有効投票の総数の2分の1を超える旨又は超えない旨を官報で告示するとともに、総務大臣を通じ内閣総理大臣に通知しなけれぱならないものとすること。
  2 内閣総理大臣は、1の通知を受けたときは、直ちに、1に規定する事項を衆議院議長及び参議院議長に通知しなければならないものとすること。

第七 国民投票運動に関する規制等

 一 投票事務関係者の国民投票運動の禁止

 1 投票管理者、開票管理者等は、在職中、その関係区域内において、国民投票運動をすることができないものとすること。 2 中央選挙管理会の委員等、選挙管理委員会の委員及び職員、裁判官、検察官、警察官、会計検査官、徴税官吏は、在職中、国民投票運動をすることができないものとすること。

 二 公務員等の地位利用による国民投票運動の禁止

 国又は地方公共団体の公務員等は、その地位を利用して国民投票運動をすることができないものとすること。

 三 教育者の地位利用による国民投票運動の禁止

 教育者(学校教育法に規定する学校の長及び教員をいう。)は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して国民投票運動をすることができないものとすること。

 四 外国人の国民投票運動の禁止等

 外国人は、組織的な国民投票運動や国民の投票行動に重大な影響を及ぼすおそれのある国民投票運動をすることができないものとすること。

 五 国民投票に関する罪を犯した者の国民投票運動の禁止

 この法律に規定する罪により禁錮以上の刑に処せられたために選挙権及び被選挙権を有しない者は、国民投票運動をすることができないものとすること。

 六 報道機関の自主的取組

 新聞社、通信社、放送機関その他の報道機関は、虚偽の事項を報道し、又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して国民投票の公正を害することのないよう、報道に関する基準の策定、報道に閲する学識経験を有する者を構成員とする機関の設置等の自主的な取組に努めるものとすること。 (サイト管理者注:4月18日に与党案となるにあたり、赤字部分が削除されました)

 七 投票日前の放送による広告の制限

 何人も、国民投票の期日前7日から国民投票の期日までの間においては、国民投票に関する広告を、一般放送事業者、有線テレビジョン放送事業者、有線ラジオ放送の業務を行う者又は電気通信役務利用放送の業務を行う者の放送設備により放送をさせることができないものとすること。

 八 政党等によるテレビジョン放送及び新聞広告

 1 政党等は、憲法改正案広報協議会の定めるところにより、日本放送協会及び一般放送事業者のテレビジョン放送の放送設備により、無料で、憲法改正案に対する意見の放送をすることができるものとすること。
  2 政党等は、憲法改正案広報協議会の定めるところにより、新間に、無料で、憲法改正案に対する意見の広告をすることができるものとすること。

第八 罰則

 1 @買収罪、A投票干渉罪、B国民投票の自由妨害罪、C投票の秘密侵害罪、D国民投票運動の規制違反の罪その他の罪に関し、必要な罰則の規定を置くものとすること。
  2 国外犯に対し、必要な罰則の規定を置くものとすること。

第九 国民投票の効果

 一 国民の承認

 国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が有効投票の総数の2分の1を超えた場合は、当該憲法改正について国民の承認があったものとすること。なお、最低投票率制度は導入しないものとすること。

 二 憲法改正の公布

 内閣総理大臣は、憲法改正案に対する賛成の投票の数が有効投票の総数の2分の1を超える旨の通知を受けたときは、直ちに当該憲法改正の公布の手続きを執らなければならないものとすること。

第一〇 国民投票無効の訴訟等

 一 国民投票無効の訴訟

 1 国民投票に関し異議があるときは、投票人は、中央選挙管理会を被告として、国民投票の結果の告示の日から起算して30日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができるものとすること。
  2 1による訴訟の提起があった場合において、@国民投票の管理執行に当る機関が国民投票の管理執行につき遵守すべき手続に関する規定に違反した場合、A投票人の投票意思を妨げるおそれのある国民投票運動の規制及び罰則に違反する行為があり、多数の投票人が一般にその自由な判断による投票が妨げられたといえる重大な違反がある場合、又はB憲法改正案に対する賛成又は反対の投票の数の確定に関する判断に誤りがある場合であって、そのために国民投票の結果に異動を及ぼすおそれがあるときは、裁判所は、その国民投票の全部又は一部の無効の判決をしなければならないものとすること。

 二 訴訟の処理

 訴訟については、裁判所は、他の訴訟の順序にかかわらず速やかにその裁判をしなければならないものとすること。訴訟関係人及び中央選挙管理会その他の国の機関は、充実した審理を特に迅速に行うことができるよう、裁判所に協力しなければならないものとすること。

 三 訴訟の提起と国民投票の効力

 訴訟の提起があっても、国民の投票の効力は、停止しないものとすること。

 四 憲法改正の効果の発生の停止

 1 裁判所は-、意法改正が無効とされることにより生じる重大な支障を避けるために緊急の必要があるときは、申立てにより決定をもって、憲法改正の効果の発生の全部又は一部を停止するものとすること。ただし、本案について理由がないとみえるときは、この限りでないものとすること。
  2 1により憲法改正の効果の発生を停止する決定があったときは、憲法改正の効果の発生は、本案に係る判決が確定するまでの間、停止するものとすること。

第一一 再投票及び更正決定

 1 訴訟の結果、国民投票の全部又は一部が無効となった場合(2の更正決定が可能な場合を除く。)においては、更に国民投票を行わなければならないものとすること。
  2 訴訟の結果、国民投票の結果が無効となった場合において、更に国民投票を行わないで国民投票の結果を定めることができるときは、国民投票会を開き、これを定めなければならないものとすること。

第一二 その他

 1 国民投票の執行に関する費用並びに放送及び新聞広告に要する費用は、国庫の負担とするものとすること。
  2 その他所要の規定を設けるものとすること。

第一三 憲法改正の発議のための国会法の一部改正

 一 憲法改正案の提出

 1 議員が憲法改正案を提出するには、衆議院においては議員100人以上、参輦院においては議員50人以上の賛成を要するものとすること。
  2 憲法改正案の提出に当たっては、その提出者は、内容的に関連する事項ごとに区分して行うよう努めなければならないものとすること。

 二 憲法審査会

 1 日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行い、並びに憲法改正案及び日本国憲法の改正手続に関する法律に関する法律案を審査するため、各議院に、常設機関として、憲法審査会を設けるものとすること。
  2 憲法審査会は、憲法改正案及び日本国憲法の改正手続に関する法律に関する法律案を提出することができるものとすること。
 3 各議院の憲法審査会は、他の議院の憲法審査会と協議して合同審査会を開くことができるものとすること。合同審査会は、憲法改正案に関し、各議院の憲法審査会に勧告することができるものとすること。
  4 憲法改正案の議決に当たっては、各議院の法定議員数の3分の2以上の賛成を要するものとすること,
 5 憲法審査会の議事その他運営に関する事項については、各議院の議決により特別の定めをすることができるものとすること。

 三 憲法改正の発議及び国民に対する提案

 1 憲法改正案について国会において最後の可決があった場合には、その可決をもって、日本国憲法第96条第1項の憲法改正の発議をし、かつ、同項の承認を求めるために国民に提案したものとすること。
  2 1の場合において、両議院の議長は、憲法改正の発議をした旨及び発議に係る憲法改正案を官報に掲載するものとすること。

 四 憲法改正案広報協議会

 憲法改正の発議があったときは、その国民に対する周知及び広報に関する事務を行うため、国会に、各議院においてその議員の中から選任された同数の委員で組織する憲法改正案広報協議会を設けるものとすること。

第一四 施行期日

 この法律は、  から施行するものとすること。