公明党第5回党大会方針案(憲法部分)と
重点政策案(平和・憲法関連部分)
<04年10月31日開会予定>
第5回党全国大会運動方針(案)

V 連立政権と公明党

一、憲法問題への視点

 わが党は、現行の日本国憲法は優れた憲法であり、戦後の日本の平和と安定・発展に大きく寄与してきたと高く評価しています。なかでも、「国民主権主義」「恒久平和主義」「基本的人権の保障」の憲法3原則は、不変のものとして、これを堅持すべきだと考えます。また、憲法9条は、アジアの諸国民に多大な犠牲を強いた先の戦争に対する反省と、再び戦争を繰り返さないというメッセージを諸外国に発信してきた平和主義の根拠であり、戦後の日本の平和と経済的発展を築くうえで、憲法9条の果たしてきた役割は極めて大きいものがあったと認識しています。
 しかしながら、日本国憲法は、制定以来60年近い歳月が経過しています。憲法が制定されたころとは時代状況が大きく変化し、制定時には想像さえされることがなかった新しい国民の権利や、新たな問題が提起されています。たとえば、生命科学の急速な発達に伴う生命倫理の問題や、高度情報化社会の中における個人のプライバシー保護の問題など、基本的人権にかかわる現代的なテーマが惹起しています。また、冷戦終結後、憲法前文でうたわれた国際協調主義の具体的な実践として、国連を中心とした紛争予防、平和維持、平和構築の活動にわが国としてどうかかわっていくか、貧困や飢餓、感染症対策など個々の人間の生命、生活、尊厳の確保を目指す「人間の安全保障」の実現にどうかかわっていくかなど、わが国を取り巻く環境も大きく変化してきています。
 憲法は国のあり方を規定する柱であり、憲法論議は、21世紀の日本をどういう国にするのか、未来を見据えた形で進めなければなりません。こうした認識のうえから、わが党は、一昨年の第4回党全国大会において、憲法3原則を堅持するとともに、平和憲法の象徴である憲法9条を堅持したうえで、時代の進展とともに提起されている環境権や、プライバシー権等の新しい人権を加え、現行憲法を補強する「加憲」という立場を打ち出しました。

二、現実的な「加憲」方式

 現行憲法は維持しつつ、そこに新しい条文を書き加え、補強していく「加憲」という方式は、以下のような理由から、極めて現実的な方法だと考えます。
 第1に、現行憲法は優れた憲法であり、それが広く国民の間に定着し、積極的に評価されているという基本認識があります。
 第2に、諸外国を見たとき、時代状況に合わせて憲法を補強していくというスタンスをとる国が少なくないからです。アメリカは、従来の条項をそのまま置いた上で修正条項を加えていく「アメンドメント方式」をとっていますし、フランスの憲法においては1789年の「人権宣言」が今も有効とされています。
 第3に、憲法改正について規定した憲法96条第2項では、「(憲法改正について国民の承認を経たときは)天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する」という条文があり、この「一体を成すもの」という表現にはアメリカ式の「加憲」のニュアンスが出ています。事実、96条の「改正」の英訳は「アメンドメント」という英語が充てられていますし、「日本国憲法は、本来的にアメリカ的なアメンドメント方式、つまり増加型改正が基本になっている」(江橋崇・法政大学教授)との指摘もあります。

三、未来志向の憲法論議

 憲法問題について、国会では、衆参両院に憲法調査会が設置されてから既に4年半が経過し、最終的な調査が精力的に行われています。わが党においても、党憲法調査会を中心に活発な議論を進めていますが、その議論の方向性は「21世紀の日本をどうするか」との未来志向に立ち、国民主権をより明確にする視点、国際貢献を進めるための安全保障の視点、知る権利やプライバシー権など新たな人権条項を加え、人権を確立する視点、環境を重視する視点から論議を深めています。
 たとえば、知る権利やプライバシー権、環境権といった新しい権利は、現行憲法でも13条(個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉)および25条(生存権、国の社会的使命)の規定などの解釈によって導き出されるとの見解がありますが、これらの諸権利が最高法規である憲法に明確に定めてあれば、それより下位の法律を制定するときに、より強い内容を持つ法律にすることができます。また、教育については、現行憲法に「教育を受ける権利」「教育を受けさせる義務」が定められていますが、「生涯学習」といった観点を含め、より積極的な人間主義的教育観を主張する声もあります。地方自治に関しても、現行は92条から95条までの4つの条文でしか規定されていませんが、より地方の権限を明確にした規定を置く必要があるという主張があります。新しい人権に関する憲法論議においては、あくまで憲法における“権利のインフレ化”に注意しつつ、21世紀日本のあるべき姿を目指して論議を進めてまいります。

四、憲法9条問題への対応

 国会の憲法調査会でも焦点になっている憲法9条の問題については、わが党においてもタブーを設けず議論を積み重ねてきました。その主な論点は、「自衛隊の存在」「国際貢献のあり方」「集団的自衛権の行使の問題」などに立て分けることができますが、これまでの党内論議では、「現行9条を堅持すべき」との議論が大勢です。
 党内の9条論議を概括しますと、「平和の党」として9条を大切にし、今後も堅持すべきだという強い意見があります。一方、専守防衛、個別的自衛権の行使主体としての自衛隊の存在を認める記述を憲法に置くべきだという意見や、その反対に、既に実態として合憲の自衛隊は定着しており、あえて書く必要はないという指摘もあります。
 また、国連憲章は、国連による国際公共の価値を追求するための集団安全保障における武力行使を認めていますが、日本政府は、集団安全保障にあっても、武力行使は許されるべきではないとしています。わが党においては、あくまで民生中心の人道復興支援を主体とすべきだとの意見が大勢です。また、国際貢献については、明確化を望む指摘がありますが、9条に書き加えるか、前文に盛り込むか、別建てで起こすか、また法律に委ねるかなど意見が分かれています。
 一方、集団的自衛権の問題については、個別的自衛権の行使は現行憲法でも認められているが、集団的自衛権の行使は認められないという意見が大勢です。
 国民の間には、憲法9条を変えることに対する危惧があることも事実であり、見直しについては、国民的な合意を形成する観点から慎重に議論を進める必要があります。今後の9条論議に当たっては、9条の1項の戦争放棄、2項の戦力不保持の規定を堅持するという姿勢に立ったうえで、自衛隊の存在の明記や、わが国の国際貢献のあり方について、「加憲」の論議の対象として、より議論を深め、慎重に検討していく方針です。
 憲法は、国のあり方を決める根幹であり、国民生活、社会生活に大きな影響を及ぼす条項が並んでいます。今後も、現行憲法を評価しつつ、総合的にバランスの取れた憲法論議を行ってまいります。

第5回党全国大会重要政策課題(案)

国際テロの時代における「新しい平和主義」

1.国際情勢をどうとらえるか

 20世紀の国際社会は、米ソ両超大国による冷戦がソ連の崩壊によって幕を閉じた後の10余年を、その後遺症や、イラクのクウェート侵略・湾岸戦争突入、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争などに代表される一国内の人権圧殺に対する軍事介入などの常態化といった課題に悩んできました。さらに、21世紀に入った直後、米国内で「9.11」テロが発生、それは、世界各地で米欧などの現代文明社会秩序を破壊しようとする国際テロとして時代の表層に躍り出てきました。国際テロ組織アル・カーイダをその国内にかくまったアフガニスタンへの米英両国中心の軍事攻撃が、国際社会から当然の流れのように受け止められ、日本も自衛隊補給艦を派遣し、海上給油という限定的支援に初めて取り組みました。

 

 他方、イラクのフセイン政権は、度重なる国連決議にもかかわらず、湾岸戦争後も大量破壊兵器の放棄をあいまいにして国際社会に背を向け、国内における反人権的行動を繰り返してきたわけですが、これに対する国際社会の対応が分裂的様相を示したまま推移したことは周知の通りです。国連の場において米英両国と仏独などとの間で幾度か対立が繰り返された後に、イラクに「最後の機会」を与える国連安保理決議1441が成立。これをも無視したイラクに米英両国を中心とする有志連合が武力行使に踏み切りました。これをいち早く支持した小泉首相に対して、武力行使の回避にむけ努力をしてきた公明党は、米英等の行動を遺憾としつつも、「政府の立場としてはやむを得ない」と判断しました。日本は昨年の7月、加盟各国にイラク復興支援を求める国連安保理決議1483を受けて、イラク南部のサマワに自衛隊を派遣することを目的とした特別措置法を成立させ、浄水、医療、学校施設補修などといった人道復興支援に取り組むことにしたのです。その後、米英側からイラク人自身に統治権限は移譲されたものの治安回復は遅々として進まず、武装勢力との激しい銃撃戦の常態化が米国の不手際と指摘され、批判も高まっています。

 

 日本は湾岸戦争時に、当時の国内状況から、費用負担など可能な範囲の支援を行ったものの、国際社会の一部から、人的貢献をしなかったとして指弾された苦い経験に鑑み、その後は、「一国平和主義からの脱却」を強調する公明党が主導する形で、紛争終了後に再発予防のため活躍するPKO(国連平和維持活動)に参加・協力する道を選択。これはカンボジアや東ティモールで大きな成功を収め、国民に国際貢献への誇りと自信をもたらすこととなりました。しかし、いま、「アフガニスタン」や「イラク」の事態が突きつけているものは、「紛争終了後の平和維持」だけにとどまらず、国際社会・国連との連携のなかで、もっと日本が、イラクのような状況下の「国づくり」や「復興支援」のために積極的に貢献するべきではないかということなのです。

2.「新しい平和主義」とは何か

 冷戦後の10年余、自らが積極的に推進したPKOや各種の国際平和協力活動、さらには災害時の緊急援助活動など、日本は国際社会の平和と安定の構築のため、あらゆる努力をしてきました。しかし、今、それだけの活動では足りないという事態が起きてきています。こうした事態を前にして、公明党は、日本が「新しい平和主義」を掲げて行動するべきではないかと考えます。それは、日本が持てる力を総動員して平和を構築するために多面的に行動するということです。

 

 新たな国際平和を構築する力は、ODA(政府開発援助)の進化とでも言うべきものを必要とします。平時を前提とするのではなく、紛争予防や紛争後の緊急を要する人道援助・復興開発支援といった非常時における積極的な展開が求められるのです。

 

 また、NGO(非政府組織)の人的、財政的基盤の増強や、政府諸機関との連携を強化することも重要な視点です。PKOとODA、NGOとを有機的に連動させること、つまり自衛隊の持つ人道復興支援力と、JICA(国際協力機構)など政府諸機関の持つ経済復興支援力、そして、NGOなど民間の多様な援助力とを総合的に発揮することが大切なのです。

 

 貧困、飢餓に喘ぐ最貧の国々や、いまだ十分に自立しえない開発途上にある国々に、経済力を含めて立ち行く手だてを醸成する役割こそ、日本の得意な分野であるはずです。

 

 そうした国際平和を現実のものとするためには、現場で生きた力を発揮しうる国際的人材の養成が欠かせないことは当然です。また、国連が国際社会の平和と安定をもたらすための本来的な役割を果たせるように、必要な改革を進めることも重要です。とともに、経済力を十分に持った同盟国として適切な助言や注文をつける必要があります。欧米とはまた一味違ったアジアの民主主義国家としての自立ある行動が望まれているのです。

 

 時あたかも、アジアにおける米軍の戦略的配置が大きく問い直されようとしています。沖縄に過剰な負担を負わせたままで果たしていいのか。北朝鮮の核開発・ミサイル発射への懸念などにどう対応するかなど、さまざまな日本の安全保障についての課題が選択を迫っています。

 

 日本の領域保全能力を一段と高めることは当然として、弾道ミサイルの脅威への対応やら国際テロへの即応体制の構築など、新たな能力も吟味が求められています。国連との協調や日米同盟の絆を強固にする一方で、多国間の安全保障の枠の構築を視野にいれることも重要です。そうした日本の防衛の質を高めることへの努力と国際社会における平和構築への能力を高めることが重要です。

 

 国連安保理常任理事国入りに、小泉首相が積極的な意思を表明しましたが、それはひたすらその地位につきたいというのではなく、憲法9条を中軸に戦後の荒廃から復興へと経済を蘇らせてきた日本として、世界の平和に積極的に貢献するための意思表示でなければなりません。国際平和を構築するためにあらゆる努力を日本らしくするということが今求められているものと思われます。

 

 ここでは、公明党が掲げる新しい平和主義、言い換えると「多面的に行動する平和主義」のうち、国際平和協力におけるさまざまな提案や取り組みへの考え方についてのみしぼって以下に述べてみます。

3.新しい平和主義にもとづく具体的な取り組み

(1)国際平和協力の新たな展開

 PKOとODAの実施にあたり、互いの連携・調整をシステム化することは、国際社会の平和にとって必須の課題です。PKOに参加している自衛隊が緊急人道復興支援を行った後に、その活動をODAプロジェクトとして引き継ぐメカニズムの整備などは、まず第一に行われるべきです。
 また、ODAについては、難民支援、地雷除去支援さらには元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰など非常時にある地域に平和を構築したり、紛争予防に役立つプロジェクトの実施に活用することが求められます。また、ODA現場における他国援助機関・国際機関などとの、より迅速で効率的な調整を促進するために、ODA予算の公正な運用確保を前提に「ODAの現地化」を推進することが重要な課題です。
 公明党はODA予算の少なくとも5%程度はNGOの活動に振り向けるべきだとの主張をしてきていますが、今後ともこの実現に全力を挙げます。政府機関や自衛隊を中軸にしたPKOでは及ばない観点での活動を果たすNGOを育てることに尽力していく必要があります。

(2)国際平和に貢献する人材の積極的育成

 国際平和に貢献できる人材を質量ともに強化し、その裾野を広げることは迂遠のようでいて大事なポイントと考えています。そうした方面の人材のデータベースの更なる集積化や、大学における関連教科の普及と単位認定の推進、さらには社会人にまで開かれた人材育成プログラムの新設などの実現が必要になってきます。
 さらに、内閣府の国際平和協力本部、警察庁、防衛庁職員などを海外の研究、教育機関に1〜2年程度派遣し、PKO、紛争予防や平和構築に関する専門知識および技術に精通した人材を養成していく必要があります。また、国連文民警察やPKO関連部局(文民部門も含む)により多くの人材を派遣し、実務経験を積ませることが大切です。国際平和協力分野の人材のキャリア形成支援の公的枠組み作りを推進し、同分野特有の身分の不安定性を克服することも欠かせません。NGOを育成・強化することの大切な視点だからです。

(3)自衛隊の国際平和協力業務への取り組みについて

 国際平和協力業務を自衛隊の「本来任務」とすることは、PKOにこの10数年取り組んできた結果として、国民の合意は得られるものと考えます。必要な法改正をして、本格的な態勢を作ることは国際貢献に一層役立つ機縁になるものと見られます。そのうえで、防衛庁、自衛隊の教育訓練施設などにおける国際平和協力業務に関する教育・訓練課程を大幅に拡充することが大切です。こうした教育・訓練業務に特化した組織(教育隊)を作ることも、日本の参加するPKOの質をさらに高めることに直結すると考えます。

 

(4)国連の改革をめぐる考え方

 先の「イラク」をめぐっての国連加盟各国に生じた亀裂は深刻な疑念をもたらしました。しかし、地球上の人類が抱える広範囲な課題の解決に国連が大切な役割を果たすことに根本的な変化はありません。国連分担金の約2割を受け持つ日本が、先の大戦時における枠組みである「敵国条項」の存在を甘んじて許していることは、極めて異常です。小泉首相が表明した国連安保理常任理事国入りの問題も、「敵国条項」の国連憲章からの削除といった点を真っ先に片付けたうえで、実現に取り組むべきです。軍事力を行使しての紛争介入に日本が名乗りをあげるという点ではなく、日本独自の平和構築力で貢献するという不動の信念こそ、国際社会に対して掲げられるべきでしょう。
 具体的には国連の信託統治理事会の改組問題が懸案となっていますが、人間の安全保障を担う組織としての「平和復興理事会」(仮称)の設置がなされるべきではないかと考えます。

(5)国際テロ対策についての取り組み

 テロ組織の国際化・ネットワーク化が進み、その手段も巧妙化している現在、これを総合的に取り締まる条約が求められています。現在、国連で討議中の「包括テロ防止条約」の早期成立を推進し、反テロ包囲網の国際ネットワークを構築することが最も望まれます。また、テロの脅威に対抗するには、国家の個別の対応もさることながら、各政府機関相互の国境を越えたネットワークが重要です。現に、各国の司法・警察当局のネットワークは司法・捜査共助体制を作り上げ、金融監督当局のつながりはテロリストの資産凍結に成果を発揮しています。このような政府の各部門間の国際的連携がさらに力を発揮できるよう、新たな多国間制度の仕組みを作るようにすべきです。
 他方、集団殺害や戦争犯罪、ある種の拉致やテロなど人道に対する罪を犯した個人を国際社会が裁くためのICC(国際刑事裁判所)を設立する条約が2002年7月に発効し、ICCがオランダ・ハーグに設置されました。同裁判所設立条約を97か国が締結していますが、わが国は未だ締結していません。早期締結を目指して国内法の整備を急がせます。
 テロリストによる大規模な攻撃や自然災害等から国民を守るために緊急事態基本法(仮称)の整備は喫緊の課題となっています。法整備にあたっては、<1>迅速かつ的確な内閣総理大臣の意思決定の確保と国会の関与のあり方、<2>基本的人権の尊重の確保、<3>国と地方公共団体の役割と責任、などの点を明確にしたうえで早急な制定が望まれます。また、安全保障会議の機能強化、政府が一体となった統合的な対応と関係機関の適切な役割分担、共同訓練の実施、危機管理に関する情報集約・分析力の強化など、危機管理に対する平素からの態勢を強化します。

(6)地球環境の保全に向けての対応

 わが国のイニシアチブで国連内に設置された「人間の安全保障基金」や草の根・人間の安全保障無償資金協力などの積極活用と予算規模を拡大し、エイズやSARS(新型肺炎)等の感染症、環境破壊、対人地雷、麻薬、飢餓などこれらの地球的諸問題を解決するための国連関係機関のプロジェクトやNGOを支援していくことが重要です。わが国として、これらの分野の人材育成や人的派遣を積極的に実施していくべきです。
 さらに、国際社会全体で環境教育を推進する体制を構築するために、エネルギー教育や地球憲章の普及を含めた環境教育国際シンポジウムや環境教育サミットの開催、国連持続可能な開発のための教育の10年の推進、環境教育促進条約(仮称)などの国際的な枠組みづくりの推進を図ります。
 また、途上国における女性を支援するために、開発における女性の参加及び受益への配慮、ODA事業への男女参画の視点の反映、ジェンダーの政策評価を普及させます。これらの支援を通して、女性のエンパワーメントを推進します。
 一方、国際的な情報格差(デジタル・ディバイド)を解消するため、「アジアブロードバンド計画」の更なる推進とともに、「世界ICT(情報通信技術)普及計画」を策定し、ODAを活用した専門家の派遣、研修員の受け入れによる技術協力や制度構築支援を実施します。また、ネットワークを活用した開発途上国への遠隔教育などを推進し、生活の質の向上を図ります。

(7)アジアにおける多国間安全保障の枠組み

 国際平和協力を進めていくうえで、アジアにおける多国間安全保障の枠組みを幾つもの角度から用意することが重要です。まずその前提として、この地域の経済の活性化が求められます。FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)の締結を促進することで、地域の経済的統合や人的交流を進め、相互理解と発展に寄与することが大事だと考えます。
 さらに、北東アジアが抱える諸課題の解決、この地域を「非核地帯」とすることなどを狙って、かねて「北東アジア安全保障会議(仮称)」を提案してきました。北朝鮮の核開発疑惑を契機に設けられたものの難航している6者会合の枠組みを維持・発展させることは、実現への試金石となるものと考えます。
 一方、既存のARF(アセアン地域フォーラム)などの場を活用して、東南アジア諸国との安全保障対話を促進することも欠かせません。インド、パキスタンに横たわる問題の解決に腐心してきた日本としては、南西アジア諸国をも含めたアジア地域全体の安全保障対話が進む枠組みを作ることも重要です。こうした会議体の事務局を沖縄に持ってくることで、米国の戦略拠点のみではない、平和の島・沖縄としての側面を世界に向けて発信することも極めて大切だと考えます。