<自民党の改憲要綱>
安全保障についての要綱案
自由民主党政務調査会
憲法調査会
憲法改正プロジェクトチーム
(平成15年7月24日)
第一 国家の防衛
日本国は、国家の独立及び安全を守るため、個別的自衛権及び集団的自衛権を有する。
第二 自衛軍
1 自衛軍の設置
日本国は、第一に掲げる自衛権を行使する組織として、自衛軍を保持する。
2 自衛軍の任務
一 自衛軍は、第四及び第五で定めるところにより、自衛権の行使その他国家緊急事態
における措置及び国家貢献に係る措置を実施するため、出動することができる。
二 その他法律で定めるところにより、自衛軍は、出動することができる。
3 自衛軍の指揮及び組織・運用
一 自衛軍の最高指揮権は、内閣総理大臣がこれを有する。
二 自衛軍の組織及び運用は、法律で定める。
4 自衛軍の軍人に関する特例
一 自衛軍の軍人の基本的人権は、法律の範囲内において、制限される。ただし、その
制限は、自衛軍の任務を遂行するために必要かつ最小限のものでなければならない。
二 最高裁判所の下に、法律で定めるところにより、軍事規律上の犯罪に関する裁判を
行う特別の裁判所を設置する。
第三 国民の責務
国民は、国家の独立と安全を守る責務を有する。
責務の具体的内容は、法律でこれを定めるものとする。
第四 国家緊急事態
1 国家緊急事態の宣言等
@
内閣総理大臣は、次に掲げる緊急事態が発生したと認めるときは、国家緊急事態を宣言
することができる。
一 防衛緊急事態 外部からの武力攻撃により国家の独立又は安全に重大な影響が生じ、
又は生ずるおそれのある事態
二 治安緊急事態 テロリスト等による大規模騒乱その他わが国の民主的な基本秩序に
対する差し迫った危険が生じ、又は生ずる恐れのある事態
三 災害緊急事態 大規模な自然災害等により国民の生命、身体又は財産に被害が生じ、
又は生ずるおそれのある事態
A
内閣総理大臣が国家緊急事態を宣言するには、原則として事前に、緊急の必要がある場
合には事後に、国会の承認を得なければならない。
B
国会は、国家緊急事態の終了を議決することができる。
2 国家緊急事隊における措置
@ 防衛緊急事態及び治安緊急事態における措置
一 内閣総理大臣の権限
イ 防衛緊急事態及び治安緊急事態において、内閣総理大臣は、法律で定めるところに
より、自衛軍に対し、出動を命ずることができる。この場合においては、原則として
事前に、緊急の必要がある場合には事後に、国会の承認を得なければならない。
ロ 防衛緊急事態及び治安緊急事態において、内閣総理大臣は、法律で定めるところに
より、国民に対し、国家の独立と安全を守るために必要な措置を実施するため、命令
を発することができる。
ハ 防衛緊急事態及び治安緊急事態において、内閣総理大臣は、法律で定めるところに
より、国家の独立と安全を守るために必要な措置を実施するため、地方公共団体を直
接に指揮することができる。
二 内閣総理大臣の職務代行に関する特例
国家緊急事態において、内閣総理大臣が欠けた場合には、あらかじめその指名した国
務大臣が、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間、内閣総理大臣の職務を行う。
三 国会議員及び国会に関する特例
イ 任務の延長等
国家緊急事態の間に国会議員の任期が満了するときは、その任期は、国家緊急事態の
終了後一定期限まで延長される。衆議院が解散中に国家緊急事態が宣言された場合は、
衆議院の総選挙は、国家緊急事態の終了後一定期限まで延長することができる。
ロ 両院合同委員会
国家緊急事態において、国会を開会できない場合には、国会の両院合同委員会が、内
閣総理大臣の指名権、立法権、予算の議決権、条約の承認等の国会の憲法上の権限を
行使する。
両院合同委員会は、憲法上の衆議院と参議院との関係を踏まえて、法律で定めるとこ
ろにより、衆議院議員(衆議院が解散中の場合は、直前に衆議院議員であった者)及
び参議院議員で構成される。
A 災害緊急事態における措置
災害緊急事態において、内閣総理大臣は、その有効な対処のために必要な限り、法律
の定めるところにより、自衛軍を出動させ、国民に対し命令を発し、及び地方公共団
体に指示を与えることができる。
第五 国際貢献
国際貢献上必要と認められる場合において自衛軍の軍事力を行使するときは、原則とし
て事前に、緊急の必要がある場合には事後に、国会の承認を得なければならない。
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